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核ゴミ問題北海道会議inさっぽろ 報告(1)

投稿日:2022年2月2日

昨年11月13日に行われた「核ゴミ問題を考える北海道会議inさっぽろ」の報告を、何回かに分けておこないます。最初に、昨年末に急逝された呼びかけ人の外岡秀俊さんが朝日新聞の道内版に書かれた記事を紹介します。おそらくこれが外岡さんが新聞に書かれた最後の原稿になったのではないかと思います。


核ごみ 全道で話し、聴き、「共感」

 外岡秀俊(ジャーナリスト・作家)

今月13日、「核ゴミ問題を考える北海道会議」の集会が札幌市内で開かれた。「核ゴミ」は原発から出る高レベル放射性廃棄物だ。その最終処分場を選ぶ文献調査に寿都町と神恵内村が手を挙げ、手続きが始まった。

市民でつくる北海道会議の呼びかけは、とてもシンプルだ。賛成であれ反対であれ、初めに「結論ありき」ではいけない。これは、みんなで話し合い、理解を深めるべき全道の問題だ。

こうした施設の建設で国はしばしば地元に対立を持ち込み、自治体を分断する。賛成派を後押しし、反対派を孤立させる。
だから、故郷がズタズタにされる前に賛成・反対の立場を超えて対話を深める。地元を分断させない。孤立させない。それが合言葉だ。

第1部では、福島原発事故で札幌に避難した女性が発言した。
「原発の立地自治体は福島の一部。でも事故が起きて『福島が原発を誘致したんでしょ』といわれた。核ゴミで何か起きれば、必ず皆さんも『北海道が誘致したでしょ』と言われます」

寿都町で核ゴミ問題の深刻さを訴えてきた「町民の会」の女性3人も発言した。
「両親からは、声をあげたり、署名を集めたりするのは寿都では恥ずかしいことだと言われた。騒ぎを起こすのはよそ者だ、と。でも最後は心で応援してくれた」
「声を出さない。声を出せない。それが当たり前になった。通りすがりに『あなた方を応援してる』と言われ、嬉しかった。今の寿都では、そう言うことすら本当に勇気がいるんです」
3人は思い余って、発言の途中で何度も絶句した。そのつど拍手がわき3人は発言を続けた。そのつど拍手がわき3人は発言を続けた。

第2部の話し合いは不思議な「対話」の実験だった。3人が1組になり、1人が話し手、1人が聴き手、1人が観察役になる。話し手は7分、自らの体験を踏まえて1部の感想を語り、聴き手は2分、話を聞いた感想を述べ、観察役は「対話」で何を感じたかを1分で話す。3人全員が交代で3役をこなす。

話すのが苦手な人もいる、他人の話を聞かない人もいる。だが全員が話し、聴き手になると、気持ちがほぐれ、本音がもれる。
参加者はこんな感想を残した。「聴いて良かった!話して良かった!」「容認派の話も聞いてみたい」「北海道いいんでないかい!思いは同じ!」
そこには全員が話し、聴くことで生まれた「共感」があった。「分断」を克服するのに、説得や主張は効果がない。共感をもとに互いの立場を理解し、対話を深めることが何より大切だ。

第3部ではアイヌ古布絵作家の宇梶静江さんの講演に続き、
全道のアイヌの人々14人が舞台から語りかけた。「先祖からの聖なる地に、核のゴミだけは持ち込ませてはいけません」
アイヌのウタリ〈同胞)と和人が、北海道の将来について対話を深める。これも、まれなことだろう。何かが変わろうとしている。そんな予感がした。

(朝日新聞、2021年11月25日朝刊・道内版)

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